細雪
谷崎 潤一郎 著
「細雪」<昭和二十四年発行 中央公論社版>
(三百五十円 当時価格)
お花の先生のお宅の本棚に、「細雪」を見つけたとき…ふっとお正月の日記へのレスにこの本のことが書かれたのを思い出し、本を手にとりました。 それは、小磯良平氏の装丁で、しかも昭和二十四年に発行されたものです。今は経ってしまった時の為に沁みがつき、色も褪せてしまっていますが、浅葱色に白の六花が鏤められた上に朱色の「細雪」の文字が載っているデザインです。 当時はさぞ、美しかったであろうその本に、上中下が一冊に纏まっていること、小磯良平の口絵にも惹かれ、読み始めました。 以前、市川崑監督の映画を見たことはありましたが、何年も経て、原作を読もうとは…思ってもみませんでした。 とんとんと、なにかしら重なるものがあると、縁のようなものなのか、こういうふうにことが運ぶものなんですね。
お話はみなさんよくご存知の美人四姉妹のうちの次女、三女、末っ子の三人の女が織り成す物語。 幸子・雪子・妙子の其々がとても魅力的で、且とても個性的。 私は三人三様でみな好きになりました。
この本には、有名なシーンがあります。春の花見…初夏の蛍狩り…春の花見は京都が舞台なので、一度、人ごみを億劫がらず、なぞって見るのもいいかもしれません。幸子は花見を「絵」に、そして蛍狩りを「音」に喩えられるというのですが、そのシーンも好きだなぁ。 日常から始まり、フェイドアウトするように終わる・・・なんだな不思議な感覚に陥る小説でした。
そして、一度「残月」を聞いてみたいものです。
すぐに雰囲気に浸る、と魚なのでした。
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